086 巷百物語 怪之八十三

殿さまをおそったネコ  むかしむかし、江戸(えど→東京都)に有馬(ありま)という殿さまの屋敷がありました。 ある年の春の夜、殿さまが便所(べんじょ)へ行っての帰り、おぼろ月をながめながら渡り廊下を歩いていると、何者かが後ろからかけよってきて、いきなり肩に手をかけました。「何者!」 殿さまがふりむいた時、相手…

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071 宇治拾遺物語(巻4、055)

071 宇治拾遺物語 巻四 (55) 薬師寺別当のこと    今は昔、薬師寺に、とある別当僧都がいた。 寺を統括する別当という地位にあったものの、寺のものを着服することもなく、 ただ極楽に生れ変ることだけを願うような人だった。  さてこの別当。 年老いて病にかかり、 死を目前にした念仏も唱え終り、も…

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085 巷百物語 怪之八十ニ

袈裟切り地蔵(けさきりじぞう)  むかしむかし、元和二年(1616年)のある雨の降る夜、一人の侍が久々利城へと急いでいると、「助けてください。悪人に追われています」と、一人の美しい女の人が駆け寄ってきたのです。(夜だと言うのに、こんなところへ女が一人でいるのは怪しい) そう思った侍は、刀に手を掛けると用心深…

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